民間の保険と政府労災保険の違い

問い合わせに「民間の保険に入っていれば大丈夫ですよね?」という方がいらっしゃいます。大丈夫かどうか?は何を基準としているのかという事になりますが、当団体で扱っている保険はあくまでも「国の保険」ですので、その内容も変わってきますし、保障内容も変わってきます。ではどう違うのか、何が違うのかを見ていきましょう!できれば、ご自分の保険証を手元に用意してみるとわかりやすいと思いますよ。

保険証を確認してみよう!

まず、保険には必ず記載されていることがあります。それは、保険にかかわる者の事で「保険者」「契約者」「被保険者」「受取人」という何だか難しい言葉が並んできます。保険証にも必ず記載されているものです。もっと簡単な言い方は無いんですかね、とは言っても決められたものなのでここはひとまず置いておいて、下記に説明していきますね。

●保険者(ホケンジャ)
保険を取り扱っている組織「企業・団体」の事を言います。言い換えれば「保険の加入先」であり、その保険商品の責任を負っている者です。民間の保険であれば保険者は「〇〇保険株式会社」等記載されています。

●契約者(ケイヤクシャ)
保険者が取り扱っている保険商品に対して、加入申し込み(契約)を行う者で、加入した保険に対しての支払いや、支給申請、内容の変更等の決定をするなど、加入した保険を遂行するための決定責任を負うものです。

●被保険者(ヒホケンシャ)
加入する保険を決める者が「契約者」に対して、その保険の保障対象となる「人」の事を言います。簡単に言えば「保険をかけてもらう人」です。被保険者に万が一の事があったときに、その掛け金がおりるのが「保険」といっても良いでしょう。

●受取人(ウケトリニン)
読んで字のごとく、保険からおりるお金を受け取る者の事です。これは簡単ですね。

このように、個々の責任の相対関係によって保険は成り立っています。保険を契約するかどうかを「契約者」が決める。そして、その保険は誰にかけるのか「被保険者」。その保険の保険金は誰が受け取るのか「受取人」。そして、保険請求が起きた場合に、保険金を支払うのが「保険者」ということになります。これが一番簡単な説明かな?と思います。

では、政府労災(一人親方の労災保険)と民間の保険の加入(契約)の関係の違いを下の図に示します。

名称 一人親方の労災保険 民間の保険
保険者 政府 株式会社・相互会社等
契約者 加入者と言います
一人親方の個人名で加入
契約者といいます
個人・法人名で契約
被保険者 一人親方の個人名 個人名・法人名
受取人 受給者と言います
被保険者と受取人は同一
※死亡の際は法律で定める者
契約者が定める

 

このように、一人親方の労災保険は「政府労災保険」ですので、民間とは違い「契約者→加入者」となり、「受取人→受給者」と呼び名が変わります。また、受給者は基本保険加入者となりますが、死亡したときは「法律に定める者」が受給者となります。

さて、保障内容はどう違うのか?ということになります。一人親方の労災保険は「労働災害保険」となりますので、民間の保険との違いをわかりやすく説明するのはどうしようか・・・とかなり悩みました。
何とか考え抜いた結果、これがわかりやすいかな~、という事で、下記表に示します。

【参考】

名称 一人親方の労災保険 民間の保険
入院保障 負担なし 入院保険(医療保険)
保険会社が定める約款指定の状態により入院したとき、契約者が決めた日額保険金が決められた日数分支払われる
通院保障 負担なし 入院保険(医療保険)
保険会社が定める約款指定の状態により通院したとき、契約者が決めた日額保険金が決められた日数分支払われる
手術保障 負担なし 入院保険(医療保険)
保険会社が定める約款指定の状態により手術したとき、契約者が決めた手術等保険金が支払われる
薬価代保障 負担なし そのような保険は
ない
と思われます
休業時の保障 加入者が労災保険加入時に決めた給付基礎日額の8割相当額で休業4日目以降に支給休業期間に定めはない 休業補償保険
保険会社が定める約款指定の状態であった場合、契約者が決めた休業期間や保険金額に応じて保険金がもらえる(免責事項あり)
死亡時の保障 受給資格の遺族がいる場合
※遺族年金
受給資格の遺族がいない場合
※遺族一時金
その他以下
遺族特別支給金
埋葬料
生命保険
険会社が定める約款指定の状態により死亡したとき、契約者が決めた死亡保険金額が受取人に支払われる
年金保険
保険会社が定める約款指定の状態になったとき、契約者が決めた保険金額金が支払われる
継続した傷病の保障 傷病年金
(傷病療養開始後1年6ヵ月を経過した日、または同日後に傷病が治っておらず、傷病等級に該当したとき)
入院保険(医療保険)
保険会社が定める約款指定の状態により入院したとき、契約者が決めた日額保険金が決められた日数分支払われる
障害が残ったときの保障 ※障害年金
傷病が治った後に障害等級1~7級のいずれかによる障害が残ったときに支払われる
※障害一時金
傷病が治った後に障害等級8~14級のいずれかによる障害が残ったときに支払われる
そのような保険は
ない
と思われます
介護が必要となったときの保障 介護給付
障害年金、または傷病年金を受けている者で一定の障害を有し、現に介護を受けている場合に支払われる
※常時介護と随時介護では支給金額が変わります
介護保険
保険会社が定める約款指定の介護等級状態になったとき、契約者が決めた保険金額金が支払われる

※負担なしの条件は「社会保険適用の手術や入院、薬代」となります。一部負担が発生する場合もあります。

このように、一人親方の労災保険の保障の範囲は、実はかなり広いんです。労災保険に入るだけで、これだけの保障があるという事を知らない方が多いようです。ですから、民間の保険と比較するのは大変ですが、これだけの保障をつけたいとなると、民間保険では様々な種類の保険商品を検討し、入らなければいけなくなる可能性があります。また、保険金額の設定や支払い条件もしっかり把握しなければいけません。
しかし、労災保険は「労働中、または労働を起因とするケガや病気」で使うものですので、反対に「労働を起因としない」ケガや病気は適応されません。そちらは国保の適応となりますのでご注意ください。そして、この表はあくまで単純比較であり、どちらが良いとか悪いとかの比較ではありません。また、いくら入るのか?という説明はここではしていませんので別途ご説明いたします。
そして、「じゃあ、民間の保険を辞めよう」とか「労災保険はやめて、民間保険にしよう」などの判断材料ではありませんのでご注意ください。双方の良い面をとらえて検討してみてくださいね。

 

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